【レビュー】『JUST CAUSE3』戦争をしに来た男の末路

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プレイ概況:PS4版 2周(累計60時間程)

プレイ済みのシリーズ作品:Just Cause2

 

世に数多くのオープンワールドゲームはあれど、意外とありそうでないサブジャンルの一つに「戦争*1」を扱ったオープンワールドがある。

私はかつて『Mercenaries2: World in Flamesというゲームに夢中になった事がある。主人公の傭兵集団が南米の独裁政権を打倒するというコンセプトの元に、膨大な銃火器に多彩な戦闘車両、果ては砲撃や空爆要請で敵の強大な軍事基地を片っ端から瓦礫の山に変えてしまえるという、大味な部分もあったが、それ以上に派手で痛快な遊びを追求した作品であり、正に「戦争の自由度」を体現したオープンワールドだった。

一しきり遊んだ後、次回作の情報をネットで漁ったが、情報が全く出て来ない。そして、開発スタジオ(Pandemic Studios)閉鎖の事実を知り、愕然とした。*2

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今は無きPandemicのスタジオロゴ。アーメン。

こうして、私のマーセナリーズ3への夢は唐突に潰えた。数年後、日本語版のバグ問題で長らく敬遠していた『Just Cause2』をプレイした事によって、このフラストレーションは大いに解消される事になった。

私はこの作品にマーセナリーズの再来を見た。

銃火器や車両の種類は少なく、支援攻撃も無いが、ジャストコーズにはグラップリングフックとパラシュートを使った縦横無尽な白兵戦の楽しさがあった。こちらも欠点はあったものの、マーセナリーズと極めて近い感覚で「戦争の自由度」を楽しめる作品で、デベロッパー・パブリッシャー共に違えど、私の知る限りマーセナリーズのDNAを受け継ぐ唯一無二の作品だった。

そして、ジャストコーズ2をトロコンするまで遊んだ後、ジャストコーズ3の発売を知り、スクリーンショットやトレーラーを観て、これまで以上に興奮した。ウイングスーツの実装により拡充された白兵戦を筆頭に刷新されたグラフィック、芸術的とも言える爆発・破壊表現など、ゲームエンジンの根本から何から次元が違う進化に、私の脳内はエンドルフィンで満たされた。

私は確信した。ジャストコーズ3は幻のマーセナリーズ3どころか、それを超える大傑作になるーーー。

 

はずだった。 

 

破壊の美学

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砲火に輝くメディチの夜を縫って、反乱軍の「真打」リコ・ロドリゲス登場。いきなりRPGを装備しているのは流石。

ジャストコーズのテーマは至ってシンプルで「とにかくぶっ壊す事だ。

戦争ゲームと言っても銃火器をメインにした血生臭い銃撃戦よりも、オブジェクトの破壊に比重が置かれている。対象はオープンワールドに配置された敵の軍事基地や師団レベルの軍隊で、これらを片っ端から鉄クズに変える事によって、戦略レベルで敵の軍隊と渡り合うワンマンアーミーの快感を味わう事が出来る。

その手段も豊富で、パラシュート降下からのバズーカ乱射やリモート爆弾をバラ撒くのは勿論、時には戦車やヘリ、戦闘機に軍艦まで使って、陸海空ありとあらゆる角度から敵の基地を攻略する事が出来る。

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マルチロック可能なランチャー、FIRE LEECH。爆発系の武器は特に個性豊かだ

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戦闘機で敵基地に特攻。今作の戦闘機にはミサイルのロックオン機能や空爆用のマーカーが付与されており、前作よりも扱いやすくなっている

本作の自由度の本質はここにある。「オープンワールド」に「自由度」を組み合わせてその価値を大々的に謳ったゲームは、蓋を開けてみればGTAが作った雛型の二番煎じに帰する事が多い。ジャストコーズはそこに戦争遂行の為の豊富な手段を用意する事で、「戦争の自由度」というオリジナリティーを追求している。GTAが銀行強盗をするゲームだとすれば、ジャストコーズはその銀行を建物ごと吹っ飛ばすゲームである。

「殺す事」より「壊す事」。何ともスケールの大きい、豪快な「戦争ごっこ」だ。

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ミッション「ミサイル・カウボーイ」より。桃白白よろしく弾道ミサイルに乗って、その軌道を力技で修正するリコ。前作のセルフオマージュであると同時に、馬鹿も突き抜ければ格好良く見える好例。「英雄気取りは俺の専売特許」と豪語するだけはある。

ただ破壊するだけなら単調なゲームかと思われるかも知れないが、アバランチエンジンによって描かれる破壊のリアクションは、類似作品には無いリアリティと美しさがある。

破壊対象のオブジェクトは恐ろしく細かいパーツで構成されており、破壊されると命を持ったかの様に崩れ去り、爆炎が水彩画の如く朦々と立ち上がって地中海の青空に溶けて行く。制圧対象である敵拠点は花火玉の宝庫と言っても過言では無く、物理エンジンの底力を見せ付けながら、デカい花火が次々と打ち上がる様は感動的ですらある。

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グラップリングフックでガスタンクを破壊するシーン。”破壊のマエストロ”リコ・ロドリゲス曰く「爆発は芸術だ。」

本作が掲げた「破壊と混乱」というコンセプトは見事に達成されている。相変わらず銃火器と戦闘系車両の種類は少ないが、前作よりはバラエティが豊かで、デザインもシャープなものになっているので、まあ良しとしよう。何より、その不満は感動すら覚える派手な爆発が帳消しにしてくれている。

このコンセプトの化身とも言うべき兵器が「M488バベリウムランチャー」で、並みの戦争ゲームではお目にかかれない、およそロケットランチャーとは言い難いふざけた爆発力を持ち、小さな軍事基地であれば一撃で吹き飛ばせる程の破壊力を持つ。ロケットランチャーと言うよりデイビークロケットに近い超兵器で、その爆発は圧巻の一言。

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M488で軍事施設を吹っ飛ばすシーン。一般的なRPGなどと同じ感覚で撃つと、ほぼ間違いなく自爆する

その他の細かい点を挙げると、前作では一方的に上がり続けるだけだったヒートゲージの改善(増援を呼ぶ通信兵を排除するとヒートゲージの上昇が停止する)や体力メーターの廃止(完全な自動回復)もゲームプレイのテンポを向上させている。

この辺りは満足というか期待以上のクオリティだ。

死んだ筈のマーセナリーズのDNAが「息も切れ切れ」どころか、恐ろしくパワーアップして堂々たる凱旋を果たした。私は本作に「マーセナリーズの後継者」と一方的な期待を押し付けてしまったが、見事にそのワガママに応えてくれた。

ジャストコーズは本当に豪華な戦争ゲームになった。

 

移動を楽しみに変えるアクションメカニック

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本作はオープンワールドの宿命とも言える「退屈な移動」に真っ向から挑み、見事にこの魔物退治に成功している。

この勝利に貢献した最大の功労者が、今作から実装されたウイングスーツだ。これが前作から引き継がれたグラップリングフックとパラシュートに完全にマッチしている。

移動の際、まずグラップリングフックを近くの建物や木々に打ち込み、ロープを巻き取りながら宙に浮いている間にパラシュートを展開する。ここで一瞬フワリと浮き上がり、そのままウイングスーツを展開して生身で滑空を始める事が出来る。滑空しながらグラップリングフックを前方のオブジェクトに打ち込んで、更に飛び続ける事が出来る。

文字で説明すると複雑に見えるかも知れないが、この滑空アクションは基本的に何時でも何処でも可能で、慣れてしまうと手足の如く扱える様になる。正真正銘の鳥人間である。

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「シェルドン!今何キロ!?(ドボォしない)」

更に、このウイングスーツは地面スレスレを滑空する程加速するという性質を持つ。ここがキモで、墜落や地面に激突するリスクと高速移動のメリットがトレードオフになっている。これにより、墜落や激突の緊張感を維持しながらオープンワールドを飛び回る快感を味わう事が出来る。仮に墜落してしまっても即死することは無い為、すぐに滑空を再開出来る(この滑空アクションに、美しい地中海の風景風を切る音響が華を添えてくれる)。

この墜落と滑空の繰り返しは、単純ながらかなりムキにさせてくれるもので、気が付いたら目標の地点まで到達している事もしばしば。しかも、普通のオープンワールドではファストトラベルで機械的に済ませてしまう様なキロ単位の距離だ。

オープンワールドにおける退屈な移動を高速移動によって解決するという発想は、本作以外にもGRAVITY DAZEシリーズなどが実現しているが、あちらが加速ボタンの押しっ放しで移動のストレスを「減少」させる次元に止まっていたのに対し、ジャストコーズ3はそのストレスを「ミニゲーム」にまで昇華させている

ジャストコーズ3では、移動自体が一つのゲームとして成立している。数キロ先であっても、ファストトラベル(=移動のストレスを省略)するより、そのまま飛んで行った方が楽しいという稀有な作品である。

一方、純粋なTPSやカバーシューターのメカニックは、類似作品と比較しても極めて貧弱である。というか、前作より劣化している。

特にダッシュ」「ローリング」「しゃがみ」「カバーアクション」が出来ないのは痛い。前作ではイマイチ使い辛いものではあったが、ダッシュとローリングは実装されていた。それが今作ではどれだけスタイリッシュなモーションに進化するのだろうと期待していたが、まさか全て削除されるとは思わず、これには面食らってしまった。

地上でのリコはどうにも鈍臭い中年オヤジな動きしか出来ない。

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駆け足程度でしか走れない今作のリコ。アンタまだそんな歳じゃないだろう。

私は「崖に向かってダッシュして飛び降り→後方の軍事基地に仕掛けた爆薬を起爆→爆散する基地を背景にウイングスーツで颯爽と飛び去る」と言ったダイ・ハードごっこをやりたかったのだが、この辺りはもうじき発売のジャストコーズ4に期待といった所か。このシューターメカニックが改善されれば、本作のアクションゲームとして価値はほとんど完璧と言って良いだろう。 

 

リコと愉快な仲間達

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ストーリーについても触れておこう。 今作の舞台は地中海の独裁国家メディチ共和国。将軍ディラベロによって抑圧されたこの美しい島国に自由を取り戻すと同時に、そこに眠る架空の鉱物資源「バベリウム」を巡る陰謀が描かれている。

ゲームコンセプト同様、ストーリーはハリウッドのアクション映画をなぞった様な王道の展開で、CIAから派遣された主人公である「破壊工作のプロ」リコ・ロドリゲスが独裁者と闘うという設定は前作と同様。基本的に脳筋全開の物語で、あまり難しく考える必要は無いのだが、特筆すべきは今回の舞台メディチが、主人公リコの故郷である事だ。故郷だけあって、彼の顔見知りが共に闘う仲間として沢山登場する。リコと彼らのやり取りは見ていて楽しく、同時に豪華な吹き替えがこのやり取りに華を添えてくれる。

故郷で気の置けない仲間達と共に戦う彼は、遅ればせながらやって来た青春を味わうかのように生き生きと戦ってくれる。同時に彼自身、前作から多少歳を取って余裕が出てきた様で、今作のリコは終始飄々としていて、どこか楽しそうだ。

仲間達と軽口を叩きながら、敵の軍事基地を吹っ飛ばしてはニヤリと笑う今作のリコは、ゴージャスな大爆発と破壊にも負けない程貫禄十分で、見ていて頼もしい。と同時に「あ~あ、勿体ない」とか「もう一回ぶっ壊そうぜ」、終いには「破壊って、ホントーにイイモンですねぇ~」とか独りごちる彼には爆笑必死である。かと思えば、敵の非道な行いや仲間の犠牲に際しては、全身に静かな怒りを漲らせる。

前作のクールでぶっきらぼうな「いかにもプロ」なリコも格好良かったが、戦争ごっこが大好きなイタズラ小僧でありながら、好好爺とも静かな熱血漢とも言える雰囲気を同時に漂わせる今作のリコは愉快で頼もしく、大変印象が良い。

何と言うか、「こんなオッサンになりたい」と思わせてくれる。

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主人公リコ・ロドリゲスの吹き替えは、前作に引き続き白熊寛嗣氏。洋ゲーではクールな吹き替えを担当される事が多い氏だが、本作ではシリアスとコミカル、一粒で二度美味しい贅沢な吹き替えを味わう事が出来る。

この頼もしい主人公を支えるのが、個性豊かな脇役達だ。

リコの親友にして反乱軍のお調子者のマリオ・フリーゴは、時にリコが呆れる程のコメディリリーフっぷりを見せてくれる。このおふざけは、マリオ自身が一番楽しんではいるのだが、戦いに明け暮れるリコの精神的な救いとなっている事は間違いない。

同じくディラベロに反目した科学者ディマも、マリオに劣らぬ機械オタクの変人だが、不器用な彼女なりのやり方で、いつもリコを心配している。そして、ディラベロを増長させてしまった責任と罪悪感を誰よりも感じている。

その他、拠点解放をノリノリでプロパガンダしてくれる反乱軍のDJアレシア、男勝りで勇敢なツンデレ密輸業者アニカとその相棒テオ(吹き替えの関係でどう見てもCrysisの熱源隊長にしか見えない)、バベリウムの利用法に対するリコの警告に真剣に耳を傾けてくれる民主派のリーダー、ローザ・マヌエラなど、彼らはリコの前でも後ろでもなく、横に並んで「メディチの未来」の為に共に戦ってくれる。時に皮肉を投げ合い、時に勝利の喜びを分かち合いながら。

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ミッション「牛とワイン」より。リコをおちょくって反乱軍の仲間達と共に笑い転げるマリオと「あとでぶっ殺す」と返すリコ。お前ら子供かよ、と思いつつ、ここが本当に彼の故郷である事を教えてくれる名シーンだ

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エージェンシーの同僚では、マリア・ケーンが登場しないのは残念ではあるが、トム・シェルドンは健在。二心のある喰えない狸親父っぷりは相変わらずで、リコをサポートしつつも、アメリカの利益の為に暗躍する彼の言動も見逃せない。

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悪役も負けてはいない。

敵の親玉であるディラベロは、残虐で狡猾という独裁者のステレオタイプなイメージとしてはありがちだが、コレクタブルのカセットテープに収められた、彼が独裁者に登り詰めるまでの日々を淡々と語った独白録は白眉だ。ディラベロの偏執的な性格と独裁に染まっていく過程は、迫力があって聞いていて飽きない。

太陽の照り付ける海の街で地中海を眺めながらこれを聞けば、目の前に広がる青い海が血の色で濁り始める錯覚に襲われる事だろう。 一見、穏やかな市民生活の風景と、海を汚染し大地を踏みつけ、人々の背中に見えない銃口を突き付ける独裁の狂気。そのアンバランスな感覚は、かえって独裁国家のリアリティを際立たせている。

写実的なグラフィックにリアルなモーション、そして声優による渾身の吹き替えによって、このゲームは本当にキャラが生きていると思わせてくれる。この辺りは、親会社スクウェア・エニックスの面目躍如だ。(国内ではひっそりと発売されているデウスエクスシリーズでも、プロの声優を起用した丁寧な吹き替えが導入されている事からも、洋ゲーと言えど自社のゲームキャラを大切にしている事が窺える。そして、その精神は本作でも遺憾なく発揮されている。)

もう一つ、地中海という舞台に合わせて編成されたラテン系のサウンドトラックも非常に素晴らしい。

平時は雄大な自然と共にボレロ調の曲が世界を優しく包み込み、有事となればサルサとオーケストラのハーモニーが戦いに赴く反乱軍とリコを奮い立たせる。そして、曲の調べに乗ってフラメンコを踊るように戦うリコは滅茶苦茶カッコいい 。

・・・ここまでは良かった。  

 

間延びしたプレイを強要するチャレンジミッション、透けて見える開発者の意図

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本作は発売から3年近く経った現在でも一流のアクションゲームである事は間違いない。だが、その称賛はアップグレード関連の致命的な欠点によって、ほとんど相殺されてしまう。

初回プレイ時、オープニングで私はアサルトライフルで敵を狙い撃とうと思いR3ボタンを押した。が、全く画面がズームされない。オプションのボタン配置を見てもボタンを押し間違えている訳では無い。

まあ、きっとこれは、まだチュートリアルだから特定の操作以外は受け付けないお約束のアレなだけだ。そう思ったが運の尽きで、その後数時間プレイしてもADSは使えず終いだった。訝しみながら管理画面を開くと、ADSはチャレンジミッションと呼ばれるミニゲームのクリア報酬である事が解った。ミニゲームをクリアしないとADSは使わせないというのだ。

おかしい。いくら何でもミニゲームをクリアしないとADSすら使えないゲームなど聞いた事が無い。

結局、私は渋々チャレンジをクリアしADSを解除したが、これは本作に収録された膨大な数のチャレンジミッションに対する悪戦苦闘の始まりでしかなかった。

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本作にはオープンワールドではお決まりのレースゲームや射的ゲームが山程収録されている。それはもうウンザリするくらいに。

本作は一般的なアクションゲームと同じく、アップグレードパーツを使ってキャラクターを強化するシステム(ギアMODと呼ばれる)を採用しているが、その大部分がチャレンジと呼ばれるミニゲームのクリア報酬として設定されている。

こういったミニゲームを好まない私としては、さっさとこれを終わらせてアップグレードを獲得したかったのだが、ジャストコーズ3はプレイヤーがチャレンジの前を素通りする事を決して許さない

このクリア報酬はただ漫然とクリアするだけでは足りず、各チャレンジ毎に設定された最高スコアを達成しないとアップグレードパーツを完全に取得する事が出来ない。ここからパーツ目当てで最高評価を目指す事になるのだが、こうなると難易度は急上昇し、否が応でもリトライ地獄に突き落とされる事になる。そして、微妙に長いロード時間も二重のストレスとなってのしかかって来る。

この一連の仕様から言っても、本作がプレイヤーをチャレンジミッションに誘導しているのは明白だ。誘導どころか半ば強制とすら言って良い程で、先に挙げた本作の長所は、この退屈なチャレンジミッションを強制される事によって、ほとんど無に帰する。

思うに、ミッションクリア時の報酬や稼いだクレジット・経験値によってアップグレードを獲得する一般的なアクションゲームと差別化を図ろうとしたのかも知れない。好意的に見れば、あちこちを飛び回り、退屈な反復作業に終始するそれらのゲームに比べると、本作のアップグレード要素は純粋にアクションゲームとして直球勝負してはいる。

だが、百歩譲って難易度やロード時間に目を瞑ったとしても、多過ぎるチャレンジの数は許容し難い。特に本作のアクションの核を為すウイングスーツのチャレンジは27個もあり、ウイングスーツをフルでアップグレードする場合は、その内21個で最高評価を獲得しなければならない計算になる。チャレンジ全体では、ストーリーミッションの4倍以上の数が存在し、アップグレードの為にそのほとんどをプレイする破目になる。

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仮に新規IPのスポーツゲームとして発売されていれば文句は無かったのだが・・・

このチャレンジミッションのボリュームは幾ら何でもやりすぎだ。最終的に、チャレンジミッションとの闘いは本作のプレイ時間の半分以上を占めると言っても過言では無く、手段と目的が逆転してしまう。これは完全に本末転倒であり、多少退屈であってもクレジットや経験値でアンロックする仕様の方が遥かにマシだ。

前作(ジャストコーズ2)のチャレンジはあくまで任意であり、報酬のアップグレードも地道なマップ踏破によるパーツ回収によって賄う事が出来た。マーセナリーズ2ではチャレンジの数は少なかったし、クリア時の判定も緩かった。つまり、両者ともメインのゲームプレイに対して、あくまで脇役の立場である事を弁えていたが、ジャストコーズ3のチャレンジは脇役が主役に躍り出ようとして、舞台を台無しにしてしまっている。

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トロフィー「オール・ザ・ギアーズ」の取得を狙う場合は、ディラベロ軍そっちのけでチャレンジとの死闘を演じなければならない。これによって戦争ゲームとしての本作の価値は完全に破壊される。

故郷の危機に英雄が駆け付けたと思った矢先、彼はアクティビティやエクストリームスポーツに躍起になっている。「戦争を勝利に導く為には、これをやるしかないんだ」と、彼自身もうんざりした顔で言い訳しながら。傍らでは反乱軍の仲間達がバタバタ死んで行く。

「この男は一体メディチに何をしに来たんだ。独裁政権に抑圧された故郷を解放する為に『戦争』をしに来たんじゃなかったのか」。私はチャレンジをプレイしていて、つくづく思った。マリオやメディチの市民も同じ想いだった事だろう。

(勿論、このチャレンジミッションに対する印象は、本作に何を求めるかによって変わって来る。アクティビティやエクストリームスポーツが好きなゲーマーなら、きっと気に入るだろう。だが、派手な戦争ゲームを期待していた私にとっては、ゲームプレイに対する苦痛に満ちた妨害でしかなかった)

そして、チャレンジミッションをプレイしていると、物理エンジンの作り込みと拘りを嫌でも思い知らされる。

この物理エンジンの自慢は、本編のゲームプレイでも鼻に付く事があり、例えば弾数制限が無いリモート爆弾に対して、グレネードやロケットランチャーの予備弾薬はかなり少ない(チャレンジでアップグレードしてもランチャーは10発、グレネードは6個しか持てない)。この極端な弾薬調整からして、グラップリングフックとリモート爆弾を使ったピタゴラスイッチ的なプレイを「させたがっている」のは明白で、これが本作の売りなのは解るが、いくら何でもプレイヤーの遊び方を縛り付け過ぎではないのか。

本作はチャレンジミッションを筆頭に、肝心な所で開発者の意図が透けて見える。それが快適なプレイをアシストするものでは無く、特定のプレイを強要するデザインになってしまっている。(そのくせ、チャレンジにおける最高評価のスコア設定は、絶妙に考え抜かれたものに設定されている)

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チャレンジにはランキングや他プレイヤーへの挑戦状機能まで用意され、スコアを抜かれると一々ゲーム画面に表示される鬱陶しい仕様になっている。何が何でもオンライン要素をねじ込みたかったようだ。

楽しいゲームには、プレイヤーと開発者の良好な関係がある。

それは言ってみれば、夢中になって遊んでいるプレイヤーを開発者達が草葉の陰からニヤニヤしながら見守っているものだ。しかし、本作の開発者はその草葉の陰から出て来て、プレイヤーの横にドヤ顔で座り、「いや~、このゲーム作るの大変だったんだよ」「このチャレンジやれよ、面白いぞ!」「そのアイテムはチャンレジをやり込まないと使わせませ~ん」「どう?このゲーム面白い?面白いだろう?」とモニターを遮って挑発して来る。普通、どんなに面白いゲームでも、プレイ中にこんな奴が横に居たら蹴りの一発でも入れてやりたくなるものだ。

乱暴な言い方になってしまったが、本作の過剰なアピールと誘導には、それだけイラつかされる事が多かったのも事実である。ジャストコーズ3がディラベロ軍だけで無く、自らの戦争ゲームとしての価値まで吹っ飛ばしてしまったのだとすれば、それは悪い冗談だとしか言い様がない。実に勿体ない事だ。

 

たった一つの改善

チャレンジ強要という不愉快な仕様は、周回プレイを躊躇させるという、もう一つの超巨大な欠点をはらんでいる。

この欠点を解消する方法はたった一つ、「周回時のMOD引継ぎ機能」の実装である。やりたくもないチャレンジに四苦八苦するリコは1周目だけで良い。たとえ、全てのチャレンジで最高評価を獲得出来なかったとしても、2周目以降のストレスは大幅に減少するはずだ。

何でもかんでもアップデートで解決しろと言うのは昨今のメーカー、ユーザー共に悪い癖だとは思うが、それでもこの作品の引継ぎ機能の有無は、リプレイアビリティに対して致命的な影響をもたらすだろう。

(そもそもアイドスというメーカーは、トゥームレイダーにしろデウスエクスにしろ、やたらと周回時の引継ぎに対して厳しい印象がある。)*3 

 

DLC

DLCを購入するとマップに新たなエリアが表示され、外伝的なストーリーと共に新たなガジェットが追加される。

特にDLC第1弾の「スカイフォートレス」で追加されるバベリウムウイングスーツはゲームプレイを一変させる。このバベリウムウイングスーツには充電式のジェットエンジンが装備され、グラップリングフックを使わずとも墜落のリスクが無いまま半永久的に空を飛び続ける事が可能になる。更にマシンガンとロックオン可能なミサイルまで装備されており、最終的にリコは人型戦闘機と化す。

この新スーツ関連のモーションも非常に凝って作られており、海面から飛び立てば勢いでつんのめり、ミサイルを撃たれれば専用の回避モーションでバレルロールをする。グラップリングフックやパラシュートからの繋ぎもスムーズで、ストレスを全く感じさせない。

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ミサイルを回避するリコ。生身の人間にミサイルをぶっ放す敵も敵だが、それを華麗に回避するこの人も大概である

DLCでも新スーツ専用のチャレンジがあり、相変わらずふざけた難易度だが、数自体は少なくなっている為、フルアップグレードまでのストレスはかなり緩和されている。

ストーリーは、バベリウム研究の資金難からディラベロに頼ってしまった女性科学者の悲劇的な末路が描かれており、皮肉が込められたサイエンスホラーな雰囲気はとても面白かった。

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ムービーはコストの都合上か一枚絵に置き換えられているが、本編のレンダリングムービーにも引けを取らない独特の味わいがある。

ただ、3種類の大型DLCは、どれも価格に対して全くボリュームが釣り合っていない。メインのミッションは少なく、そろそろ中盤(注:終盤ではない)に差し掛かるかと思った所で半ば強引に終わってしまう。DLCは実質的に新ガジェット入手の為の課金と考えるべきだが、それにしても1個1200円はちょっと高過ぎる。(現在はDLC全入りのゴールドエディションが発売されているので割高感は無い)

 

総論

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本作は長所と短所が極端で、愛憎半々の作品だ。

傑作になり得るポテンシャルを沢山秘めてはいるが、あくまで背景に留まるオープンワールドがそれを活かし切れておらず、戦争ゲームとしてのボリュームの薄さをチャレンジへの誘導によって誤魔化している。

チャレンジと言うストレスのマッターホルンを超えた先にスーパーエージェント、リコ・ロドリゲスは完成する。だが、完成した暁には、遊ぶべきコンテンツはほとんど残っていない。 

ならば、「強くてニューゲーム」で2周目は最初から全力で暴れ回ってやろうと思っても、引き継ぎ機能が全く存在しない為、1周目のフラストレーションをそのまま再現するだけになる。

昨今のアイドスの作品は、圧倒的な自由度を謳っていながら、その実特定のプレイスタイルを露骨に押し付ける様な作品が多く、本作もそのパターンに嵌まってしまう結果となった。

もうすぐジャストコーズ4が発売になる為か、ネットのあちこちでバナー広告を見かける。果たして、ジャストコーズ4は戦争ゲームとしての本領を発揮するのか、それともやっぱりスポーツゲームに終始するのか。

私としては前者に期待したい。ジャストコーズ3は全体的に高品質なゲームだったと言えるが、今度こそ戦争屋としてフルパワーで暴れ回るリコ・ロドリゲスを見てみたいものだ。それは同時に、今は無きマーセナリーズの供養にもなるだろう。 

豪快な戦争ごっこを実現したその先に、JUSTCAUSE(大義名分)の意味は輝く事だろう。

*1:一口に「戦争」と言っても、「ファンタジー色の強い古代戦争」から「SF色の強い未来戦争」まで定義が広いので、ここでは「ミリタリー色の濃い現代戦を扱ったもの」と定義する。

*2:一説には遺作となった『The Saboteur』の開発に時間とコストを掛け過ぎた為、親会社のEAによって閉鎖されたらしい。リーマンショックの真っ只中という当時の世相も追い打ちを掛けたのは間違いないだろう。

*3:ようやくと言うべきか、トゥームレイダーデウスエクスも最新作では引継ぎ機能が実装された。ジャストコーズも次回作でもアップグレートと称してチャレンジに誘導するのであれば、是非とも引継ぎ機能の実装をお願いしたい。