【レビュー】『Fallout4』そして連邦の時は止まった

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プレイ概況:PS4版 難易度VERY HARDで4周(累計530時間程)
プレイ済みのシリーズ作品:Fallout3 Fallout:New Vegas

数々のゲームアワードを受賞し、RPGの歴史に名を刻んだFallout3から7年。E3での発表から僅か4か月後の発売で多くのファンを狂喜させた本作は、世界中が待ちに待ったAAAタイトルだ。刷新されたグラフィックとアクションは勿論、様々なゲームシステムをフィーチャーし、最終的にはCS機でのMOD対応まで実現してしまった。前作を遥かに上回るボリュームで巨大化したその姿はまさに怪物であり、一度ハマってしまえば、数年単位で遊び続ける事が出来るだろう。発売から年数が経った現在でも、その魅力は色褪せてはいない。

例に漏れず私もこのゲームに夢中になり、未だ現在進行形でプレイしている。だが、前作に比べて遊び方が随分と変わった。私にとってFalloutシリーズは「1周100時間程のプレイを周回する」ものだったが、今作は「1周で何百時間もプレイする」ものになった。これは単純にコンテンツの量が膨大になった事もあるが、それ以上にゲームとしての「売り」がクエストからクラフトへと変わり、ゲームクリアという概念が無くなった事に起因していると考えられる。

 

システム

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より直感的になった今作のキャラクリエイト画面。その気になれば、これだけでも1~2時間は遊べてしまう

本作のゲームシステムを列挙してみよう。

・クエスト(ストーリー)
・アクション(FPS、TPS)
・クラフト(建築、カスタマイズ)
ハクスラ(伝説武器)
・フリーローム(探索、アイテム収集)
タワーディフェンス(拠点と住民の強化)

ざっと挙げただけでもこれだけの要素がある。アクションゲームであり、RPGであり、シューターであり、ストラテジーであり、クラフトゲームである。そして、これだけのコンテンツを収録しながら、どれもがオープンワールドの中で自然な形で連関しており、あからさまにゲームモードを選択している感覚を与えない。基本的には好きなものを好きなタイミングで遊ぶ事が出来る(タワーディフェンスは簡易的なものであり、敵のランダムな襲撃にかかってはいるが)。このシームレスなゲームモードの選択こそ本作の自由度の真骨頂と言える。

同時に没入感に優れたデザインは、オープンワールドの世界に等身大で生きる感覚に圧倒的な現実感を持たせ、このコンテンツ群を意識させないメリットを生む。

一般的なオープンワールドは、ユーザーフレンドリーなデザインを優先した結果、マップ画面に記された眩暈がする数の目標*1を達成する為に、主役であるはずのゲーム画面が使役されてしまうという主従逆転のジレンマに陥る事が多いが、Fallout4はその逆を行く

リソースやクエスト管理を一手に引き受け、インターフェースの存在意義すら説明してくれる携帯端末の「Pip‐boy」、メインテーマ以外は環境音を優先したサウンド、BGMはこの世界のラジオ局が流すオールディーズの名曲達が代替し、マップにはロケーションポイントとクエストマーカーのみが記され、HUDには最低限の情報のみが表示される。オブジェクトは死体から小物まで、ほとんど全てにアクセス出来る事によって背景から立体感を持って現れ、NPCには凄まじい量のボイスアクトが命を吹き込んでいる。

これらのデザインが、ゲームという「課題」をこなしている感覚を慎重に取り除いた事で、プレイヤーの頭にちらつきがちな「コンテンツ消化への煩い」は最小限に止められており、本作に収められた多彩なコンテンツは実際に目の前に広がる大地をプレイヤーが冒険し、経験して初めて立ち現れる様になっている。

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Pip‐boyと管理画面。主人公の道具という設定は雰囲気抜群の作り込みによって、管理画面はあくまで脇役である事を強調している

没入感の代償として、ゲームが直接ヒントをくれない分、ネットで攻略法を探す機会はかなり多い(というかほぼ必須だ)し、相変わらずPip‐boyのUIは使い辛いが、プレイヤーが主人公を通してこの世界に間接的に触れている感覚は極めて強く、その欠点を補って余りある。

かくしてFallout4は、ゲームが一方的に示した情報では無く、プレイヤーが見たもの、経験したものを全てとし、全てのプレイヤーの全てのプレイを尊重し、肯定する。クエストを遊んで物語を味わっても良いし、ジャンクを拾い集めてひたすら拠点建設に埋没しても、強武器を求めて世界中をうろつくだけでも良い。そして、途中で投げ出して他のコンテンツを遊び始めても全く構わない。主役はあくまでプレイヤーである。

これらは、RPGの「前置きとしては」文句の付け様が無い。その世界でキャラになりきって遊ぶというロールプレイング(ごっこ遊び)の定義を見事に満たしており、昨今では随分と使い倒された「オープンワールド」や「自由度」といったキーワードの価値を再認識させてくれる。

 

神にも凡人にもなれるビルド

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PERK画面。玩具屋の陳列棚の様に並んだPERKは見ているだけでも楽しい。今作ではゲーム開始後もS.P.E.C.I.A.Lを上昇させる事が出来る

Falloutと言えば、レベルアップに伴って超人化する主人公の育成も魅力の一つで、前作の主人公は半ば都市伝説と化している。

3やNVとの大きな違いは、レベルキャップとスキルが廃止され、ステータスの強化がPERKに一元化された事だ。

最高ランクのPERKはLv50で打ち止めとなっており、キャラビルドはLv50で「一応」完成と言う事になる。この点においてPERKの取捨選択には慎重になる必要があるが、3やNVの主人公の様な万能キャラに育てたいというプレイヤーにはレベルキャップを廃止した事で、最終的には全てのPERKを取得出来る様になっており、「ビルドに個性を持たせたい」という要望と「万能キャラでプレイしたい」という要望、両方に対して柔軟な対応が為されている。

さらに、レベルアップ時はPERKアンロック用のポイントが獲得されるだけで、その場で何かしらのPERKを取得する必要は無い。つまり、PERKは完全に任意のタイミングで取得出来る様になっており、例えレベルが上がっても全く強化されていない貧弱なキャラでプレイする事も出来る。(注意点として、PERKのリセットや振り直しは出来ない)

本作の発売当初、「どう遊んでも最終的には万能キャラになってしまう」という批判が挙がったが、実際にプレイしてみると全てのPERKを取得するには膨大な時間が掛かる事が解る。体感では万能感、明らかにキャラが強くなったと思えるのがLv.80以降だが、そこに至るだけでもメインクエストの経験値だけではとても足りない。*2

この仕様は、裏を返せば超人キャラを目指し始めた場合は成長が鈍いと言う事で、ゲームプレイとキャラビルドには3やNVとは違った考え方が要求される。3やNVでは、物語とキャラビルドが高い相関関係の元に「クエスト(物語)に集中する事でキャラビルドは自然に完成し、エンディングを迎えてゲームを終了する」というリズミカルなフローが存在した。

この図式(「キャラ完成→エンディング」)を今作に当てはめてプレイすると、従来のシリーズでは殆ど必要が無かったレベルアップの為の経験値稼ぎが必要になる。クエストで入手出来る経験値は相対的に減らされ、難易度別に経験値量が増減する仕様も廃止(=難易度を変えても経験値は変わらない)されており、ここからエスト以外の経験値目当てでプレイヤーを拠点開発やハクスラに誘導する作りになっているが、これらは物語にはほとんど影響を与えない為、経験値効率を優先した単調な作業プレイを誘発する。

私は当初3やNVと同じ図式で遊んだ結果、経験値稼ぎ自体が目的化するという罠にハマってプレイが散漫になってしまい、くたびれてゲームを中断する事が多かった。個人的な自戒も含めて、今作の超人キャラビルドはクエストを粗方クリアした後の壮大なオマケ、あるいは成長していく過程を楽しむものと捉えた方が無難だろう。(「エンディング→キャラ完成(いつの日か)」)

本作は極めて高い自由度故にプレイの目的自体を見失いやすいが、今作では完成が遥かに遠退いたキャラビルドも例外では無かったようで、経験値と言う目先の利益に惑わされて雑なプレイに走ると、オープンワールドに秘められた物語や人々の息遣いは放置されたまま、味わいを失う。クエストや冒険への訴求力を維持する為にも、クエストの経験値はもう少し多めに設定して欲しかった所だ。

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単調な稼ぎプレイを防止するには、PERK「idiot savant」を取得するのも手。ふざけた見た目に反して、一定確率で通常の3~5倍の経験値が入手出来るという優良PERKである

 

成金シミュレーター

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溜め込んだアイテム(の一部)を陳列。並べていて若干発狂しかけたのは良い思い出

このシリーズに共通する魅力に私有財産の蓄積がある。およそ考え得る殆ど全ての小物オブジェクトにアクセス可能で、それらを片っ端から拾って換金したり、クラフトの材料に変換する事が出来る。膨大な数のアイテムやキャップを溜め込み、拠点に飾ったり、高額なアイテムを大人買いする様は正に成金であり、キャラビルドと並ぶプレイに対する莫大な報酬である。この1から資産を形成していく快感は、周回プレイの動機としても十分に機能する。特に今作では、後述する伝説武器や拠点開発との相性は非常に良く、資産形成の快感は前作を完全に上回っていると言っていいだろう。

この膨大なオブジェクト処理とセーブデータの破損回避を優先した為に、前作よりも更に長いロード時間が必要になってはいるが、それにしてもよくぞコンシューマーで出せたものだ。

 

クラフトとロケーション 

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拙作だが、MODドカ盛りでスペクタクル・アイランドに建てた将軍用別荘の一室。未だ建設中で、完成の目途も立っていない

本作の舞台マサチューセッツと言えば、某有名工科大学に象徴される科学技術の都だが、文明の崩壊によって廃墟と化したこの都市は主人公のクラフト能力によって輝きを取り戻す。

今作で導入された拠点開発では、専用のロケーションが数十か所も用意され、そのバリエーションも開けた平原からビル街の一角まで様々。建設にはエリア制限や削除出来ないオブジェクトなど様々な制限を受ける為、完全にフリーダムな建設とは行かないが、これが逆に建設に一定の方向性を与え、背景のオープンワールドに一体化させる事を可能にする。建設用のオブジェクトも床一枚から発電機、農作物、ソファーまで、実用性・雰囲気共に多種多様なものが用意されている。これにDLCやMODを導入すれば、最終的に主人公は世界の創造主と化す。黙々と自分専用の秘密基地を作っても良いし、食料や電気を用意して住民を住まわせ、(少なくとも外見上は)かつての賑わいを取り戻しても良い。

クラフト専用のUIはかなり使い辛いし、オブジェクト同士が勝手にスナップして細かい位置調整が難しい等問題も多いが、自らが作り上げた街がこの世界に溶け込んで行く様は、連邦再建への期待を膨らませる。

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サンクチュアリの水辺に建てられた浄水器の一群。これらが生み出す「きれいな水」はプレイヤーに莫大な富をもたらす

同時にクラフトはプレイヤーに物質的な恩恵をもたらしてくれる。

従来作での物資調達は敵の装備が主な目標であり、それらをニコイチ修理して売却する資金稼ぎの為にロケーションを往復していた。今作では、物資の枯渇はクラフトが克服し、同時にニコイチ修理システムの廃止により、サバイバルゲームとしての感覚は薄れた。

代わりに、Fallout4はクラフトに起因する圧倒的な物量を用いたパワープレイを実現する。

水辺に設置した浄水器は「きれいな水」を生み出して資金源となり、農耕では大量生産された粘着剤が武器のカスタマイズ欲を加速させる。これらの富が強力な武器と弾薬に交換され、戦闘に於いて凄まじい火力で敵を圧倒させる事を可能にする。そして、フルカスタムされた装備で住民を戦闘マシーンに仕立て上げようと思えば、物資はいくらあっても足りない。

ここから材料目当てで廃墟に潜り、片っ端からジャンクを拾い集めて拠点に戻るというローテーションが出来上がる。ここに快感を覚えてしまうと、ゲームプレイはもう止まらない。息子とかもうどうでも良いや。

だが、このクラフトにはキャラビルドに関連した不自由さが存在する。一旦凝って遊び始めると、「Local Leader」やカスタマイズ関連のPERKが必要になり、同時に要求レベルとS.P.E.C.I.A.Lの値が足りていない場合は、諦めてクエストに戻るか、露骨な経験値稼ぎが必要になる。そして、長い時間を掛けてPERKを取得して拠点に戻って来た頃には、クラフト熱はすっかり冷めており、建設は中途半端なまま放棄される。モチベーションを維持する為にも、アンロックの条件をもう少し緩和するか、一定の開発目標を達成する事でアンロックされる様な形式になっていれば良かったのだが、基本的には拠点開発もクエストクリア後のオマケなのだろう。

そして、このクラフトも自由なゲームプレイの代償として、物語にほとんど絡まないという欠点を持つ。いつでもプレイ可能なクラフトは、遊びとしては確かに楽しいのだが、あくまで自己満足の域を超える事が出来ず、連邦復興の為の一大事業にはなり得なかった。

初回プレイ時、私はサンクチュアリにて浄水器と堤防建設に勤しんでいた。浄化水と規律に溢れ、飢えと暴力から逃れようと連邦の人々が大挙して押し寄せるような立派な居住地にしよう、と。街の入り口では「中に入れろ」と難民の怒号が飛び交い、婦人の腕に抱かれた赤ん坊の泣き声が木霊する。かつて自身も難民だった門番が困り果てた顔で目配せすると、ミニッツメンのメンバーとの会議に臨んでいた主人公は隣人愛の精神を持って椅子から立ち上がる。私の脳内には完璧な拠点のイメージが出来上がっていた。

が、建設による連邦復興という夢は、ラジオから流れて来たトラビス・ロンリー・マイルズの「行きたかったら行けば良いよ」という観光地の紹介程度の放送によって、あっさりと潰えてしまった。(そして住民はダイヤモンドシティに帰りたいとか言い出す始末)発売前に喧伝されていた拠点間の交流は物資の共有だけで、特別なクエストが発生する事も無い。

結局、どれだけ気合を入れて拠点開発を行っても、ダイヤモンドシティグッドネイバーには「勝てない」。

夢中になれる拠点開発も一度この事実を知ってしまうと、豪華な建築やフル装備の住民は途端に張りぼてに見えて、シラケが漂い始める。メインクエスト後のゴージャスなおまけとしてはともかく、本作の本質がRPGであるなら、物語に大きく絡む拠点を用意するか、せめて満足度によって住民の台詞が変わるぐらいの変化は欲しかったのだが。

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今作の数少ない都市ダイアモンドシティ。クラフトによって、プレイヤーが同じ位豪華な都市を作る事は可能だが、住民のリアルな生活感を再現したり、物語を導入する事は出来ない

ロケーションに関しては、核戦争の被害をあまり受けなかったという今作の連邦は、拠点開発の為の遊び場としては最適だが、ただ老朽化しているだけだったり、人が居なくなったというだけで、そもそも核戦争後という設定にする必要があったのかと訝しむ様なロケーションが多い。連邦では法が失われ、レイダーや化け物がうろつく危険な場所がある事も事実だが、キャピタルやモハビの人々と比べて連邦の人々は割とリッチな生活を営んでおり、どこか緊張感に欠ける。真に迫るアフターマスの世界を冒険すると言う意味では、キャピタルやモハビには及ばず、よくある近未来のSFに近いものになってしまった。(明らかにそれらしい場所と言えば「輝きの海」ぐらいだろう)

 

伝説武器と敵のレベルバランス

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クラフトに興味が無いプレイヤーの為に、アクションゲームとしての価値も用意されている*3id softwareが監修したと言われる今作のアクションメカニックは、単調な引き撃ちとVATS頼みに終始していた前作から大きく前進し、シューターとしても立派に遊べるものになっている。

今作ではスキル廃止に伴い、弾道がブレずに最初から真っ直ぐ飛んでくれる。物陰に隠れれば自動でカバーモーションを取り、スコープを覗けばアクションポイントを消費して息を止め、豊富なカスタマイズが銃火器の性能を強化する。NVの使い辛かったアイアンサイトは立派に改善され、エッジの効いた発砲音やリロードモーションがシューターとしての感覚に華を添える。流石にCoDやBFなどの専門タイトルと比べれば安っぽい感じは否めないが、フリーエイムで狙って撃つ楽しさは前作と雲泥の差がある。

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シリーズお馴染みのVATSも健在。ターン制RPGのシステムを再現すると同時に多彩なカメラワークが演出を兼ねる。

プレイ当初、フリーエイムの進化によってVATSは不要になったかと思われたが、その真価はレベルアップに伴って発揮される。特にクリティカル関連のPERK「Critical Banker」や「Grim Reaper's Sprint」「Four Leaf Clover」などは最終的にクリティカルを連発させるVATS無双を可能にし、一撃の威力はフリーエイムを上回る為、ボス戦では非常に頼もしくなる。

結果的に、戦闘は「ほぼVATS頼み」だった前作から改善され「VATSかフリーエイム」という2択が出来るまでバランスが調整されている。(無論、この2者を併用すれば無類の強さを発揮する事は言うまでも無い)

そして、キャラクターの超人化に拍車を掛けるのが伝説武器の存在である。

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メインクエストで各勢力が激突する場面は、プレイヤーにとっては伝説武器を稼ぐボーナスタイムと化す

今作では、敵味方問わず一定の確率でレジェンダリーと呼ばれる特殊効果が付与された装備を持ったNPCがスポーンする。この特殊効果は有用なものから大して意味が無いものまで様々だが、このレジェンダリー目当てのフリーロームだけでも相当に遊べる。そして、目当ての武器が手に入った時の喜びは一入だ。

レジェンダリー武器はゲームクリアには必ず必要と言う訳では無いが、どうしても強武器が手に入らない場合の救済策として、店売りでも結構強力な武器が手に入る様になっている。

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最強レジェンダリーの一角である爆発効果が付いたアサルトライフル。通常のアサルトライフルと同じく、モジュールをカスタマイズする事も可能

このハクスラはいつまでも遊んでいられる事は確かだが、一旦強武器を入手して攻撃力は十分になり、弾薬や回復薬にも困らなくなったらアクションゲームとしては寿命を迎える頃合いだろう。本作はよく「Falloutの皮を被ったボーダーランズ」と揶揄されるが、意地の悪い言い方をすればハクスラと言うより退屈で一方的な虐殺ゲームになる。

敵のレベルは一部を除いて殆どが固定であり、強くなり過ぎた主人公に敵が追いつけなくなって難易度は急降下する。戦闘の歯応えは再設計されたアクションメカニックがある程度カバーしてくれるが、最終的にはRPGとしての本質が顔を出し、純粋なシューターとしてはバランスが崩壊する。前作に比べてオープンワールドは狭くなり、屋外での戦闘が増え、ダンジョンとなる大規模な屋内が少ない事も戦闘を冗長にしがちだ。

恐らく上述の経験値稼ぎや拠点開発と同様、一周で全てのコンテンツを遊び尽くす場合はクエストをあらかたクリアするまでは露骨にハクスラに走る事は控えた方がゲーム全体の寿命はかえって延びるだろう。 

 

起承転「欠」の物語

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そしてRPGの本懐であるメインクエストだが、これには大きな不満が残った。Fallout3のグッドエンディングをこよなく愛していた私にとって、本作の葛藤を伴う選択と結末、消化不良感はひたすら辛く、苦しいものだった。

不満は大きく分けて以下の3点。

①与しがたい戦争
まず、本作は「世界を救う英雄の物語」ではなく、「連邦に住むある一家に起きた悲劇の物語」だった。一応、「人造人間」という世界に対する脅威は存在するが、人造人間と人類の在り方について、主人公が具体的に決定することは出来ない。選択出来る事と言えば1点「エンディングを迎える為に加入しなければならない勢力の選択」だけで、その勢力も3のエンクレイブの様な絶対的悪役が存在しない為に、「どの勢力を倒すか」ではなく「どの勢力に勝たせるか」と言う事、ひいては「世界を救う」のではなく、「平定する」事に力点が置かれている。

この点において、「世界を手に入れる」というNVのハードボイルドライクなロールプレイが成立しそうな所ではあるが、「家族愛」という倫理的問題が、その方向に振り切る事に大きく待ったを掛ける。

文字数の都合上ストーリーの詳細は省くが、この家族愛の観点から見た場合、Fallout4は家族愛の肯定がそのままグッドエンドに直結していた3とは真逆で、家族愛の肯定がバッドエンドに直結するようになっており、家族の願いと連邦の明日を天秤に掛けねばならない選択をプレイヤーに迫る。ここで非常に悩ましい葛藤を発生させる事によって、勢力の選択に意味を持たせようとしている。 

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各勢力の最重要人物

と、ここまでは良いのだが、勢力が4つも存在する事実に反して、物語の結末を決める自由度は恐ろしく低い。どの勢力も個々人では良い人も多いし、彼らの人となりを知る事が出来る個人的なドラマは魅力的なのだが、組織全体では他勢力を完全に抹殺する事しか考えておらず、それぞれの組織に於いて、トップあるいは重要なポストに就くことは出来るが、最後まで組織が掲げた強硬な態度を変える事は出来ず、他勢力との融和の為に奔走するという選択肢は全く存在しない

更に厄介な事に、「人造人間」という抽象的なテーマを闘争の中心に置いた事で、それぞれの組織の主張はヒステリックで宗教染みたものに変質し、結果的にこの戦争は連邦の人々を放り出したまま、いたずらに始められる宗教戦争の様を呈している。

各勢力のロールプレイも、BOSレールロードでは主人公の具体的なバックグラウンドを設定した割には、排他的で偏狭な思想に同化する事をプレイヤーに要求し、それまでの経緯を自ら否定させるチグハグなものになっている。この2勢力での主人公は、息子への愛情など最初から無かったかの様なイデオロギーの鬼と化す。

逆にインスティテュートでは人造人間の問題はクエストを経るごとに徐々に脇に追いやられてしまい、最終的には親子のドラマに論点がすり替わってしまう。このドラマ自体は非常に良く出来ているのだが、組織のトップに立って連邦との関係を構築し始めようという所で物語は終わりを迎える。

組織運営の自由度と穏健な態度と言う意味ではミニッツメンが最も優れてはいるが、このルートも結局は他の勢力と同じ構図で物語は終わってしまう。

つまるところ、勢力によって子細は違っても辿り着くのは同じ結末で、苦渋の決断を下して勢力を選んでも、本当に必要だったのか疑わしい大虐殺に加担した罪の意識が待っている。

もっと気楽に構えて、BOSで「アド・ヴィクトリアム!」と叫びながら人造人間を蹴散らすのも、レールロードで秘密のエージェントとして007ごっこするのも、インスティテュートで新世界の指導者ごっこをするのも確かに楽しいが、そのごっこ遊びの果てには、死んで当然とはとても言えない人々の死体の山が築かれる。私にはその罪悪感の方が大きく、Fallout3で「気兼ね無く倒せる悪役」として登場してくれたエンクレイブにある種のありがたみを覚えてしまった。

この勢力図、私にはどうにも無理矢理「戦争」を描きながら、周回をさせる為の突貫な作りに見える。4つの勢力で見せかけの周回を用意されるなら、勢力は減らして対話や組織改革という選択肢や組織独自のストーリー展開も用意しておくべきだった(少なくともレールロードは必要なかった)。

そして、エンディングでは長い旅路の割には主人公の結論はあっさりしていて、連邦全体に対する言及もかなり曖昧というか適当なものになってしまっている。この演出はインスティテュートルート以外は全く変わらないし、そのインスティテュートルートでも特別に言及されるのが息子についてである。(それもほとんど一言で済まされている)

 

②2人の息子

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愛すべきもう一人の息子。彼の存在は永遠の苦しみの始まりでもある

物語の最後、息子は親を慰めるかのように人造人間の自分を置いて逝く。

この演出は、「人造人間の問題を他人事にはさせない」という問題提起なのか、本気の慰めなのかは判らないが、私にとっては苦しみながらここまでやって来た主人公への止めの一撃だった。

この子が息子だと言うなら、あの息子の死への悲しみは何だったのか。「本当の息子は死んじゃったけど、人造人間の息子がいるから別にいいや」と考えるとでも思ったのだろうか?この子をサンクチュアリの自宅に連れて行き、これから永遠に見せかけの親子ごっこを始めろと言うのか。

この最後の最後まで主人公の親という立場を人質に取って嘲笑うかのような演出は、相当にこたえた。正直に言って、この辛辣な展開に私は混乱と怒りで人造人間の息子に殺意に近い憎悪を抱いてしまった。「馬鹿にするな」と。

だが、振り上げた手は、そっと下さなければならない。

彼は確かに自我と命を持っている。そんなものを殺せるはずが無い。もはやどちらの息子も本物の息子なのだ。一体、この「2人の息子」という現実をどう受け止めれば良いのか。

最後の最後にやってきた核爆弾級の葛藤は、悩み抜いた選択の意義を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまった。

 

③変化が無いエンディング後
そして、エンディングを迎えても連邦には全く変化が感じられない。これだけの犠牲を払っても、時代が移り変わるダイナミックなうねりや、地上の人々の困難に対して益がもたらされるというカタルシスは存在しなかった。連邦の人々は相変わらず人造人間よりもレイダーやスーパーミュータントに悩まされているし、主人公が各拠点の交易ルートを確保したからと言って、再び統一政府を立ち上げようとする動きも起きない。そもそも、今作の連邦では人々が具体的に何に困っていたのかがハッキリとせず、そのせいでメインクエストは4つの勢力が勝手に始めた宗教的大義の為の武力闘争という印象が拭えず、連邦の平和に直接的に関与したという感覚は薄い。

エンディングの後、私は何かしらの希望を見出そうとあがいた。

拠点の満足度を上げ、サイドクエストを消化し、悪人を退治しまくった。が、拠点の住人が物語の核心を突く重要な情報を持って来るとか、連邦の人々が真の平和の為に立ち上がるようなイベントが発生する事は無かった。

結局の所、それ以上の展開、「連邦のその後」を追い求めるプレイは、あくまで脳内設定という妄想でしかなく、この空回りし続けるロールプレイに対して、連邦は永遠に沈黙してしまう。そして、クラフトとハクスラというエンドコンテンツの二大巨頭が主人公の人生を押し退けて、こちらに迫って来るばかり。見せかけの平和に背を向けて、彼はVaultで再び眠りに就いたも同然だった。

これは私のメインクエスト後の冒険に対するモチベーションを大きく低下させた。どのルートを選択しても最終的には息子は死んでしまうし、その死の果てに得られたのは相変わらず何も変化していない連邦とより大きな苦悩に満ちた主人公だった。

Fallout3のメインクエストでは、大事業を達成した後に半ば隠居の身として気ままに暮らすというロールプレイが成立した。NVは利権闘争の物語であり大円団のエンディングとは行かなかったが、生半可な感傷を捨て去ったシナリオは、戦争の虚しさとそれに翻弄される人々の哀愁を描く事で「人は過ちを繰り返す」というシリーズの命題を体現していたし、登場人物達の顛末が語られるエピローグは見事なものだった。*4

今作の物語は、NVのニヒリスティックな勢力選択を抽出し、そこに半端に切り取った3のヒューマニズムで味付けした結果、ロールプレイに齟齬が生まれてしまい、結末も投げっ放しになっている。そして、エンディング後の余韻は実に気不味い。

Fallout4のシナリオはドラマ部分はともかく、アクションゲームには向いていない。私は各勢力のエンディングを見た後、それ以降の周回では息子を見つけた時点でメインクエストを終了する事にしている。主人公に物語の最後を見せてやれない事を済まないとは思うが、最初と最後で世界の雰囲気が変わらず、度し難い大虐殺があるかないかだけなら、いっそ何も起こさない方が平和を達成する最良の手段になるだろう。

 

総論

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Fallout4は、私にとって「おもしろい」「つまらない」の単純な2元論では語れない複雑な印象を持った作品で、周回を重ねる度に、違うコンテンツを遊ぶ度に、また時間を置いて再度プレイし直す度に評価が二転三転する。

プレイ時間や周回の回数から考えれば、私は間違いなく本作を「楽しんだ」が、その全体像はプレイする程に底無し沼の様に肥大化して行き、結果的に「始まりがあっても終わりが無い作品」になっている。その捉え切れない程に肥大化した全体像に、敢えて評価を下すとすれば2つの観点「世紀末シミュレーターとして」RPGとして」を挙げておこう。

前者の観点からは、強力なゲームエンジンとデザインがリアルな感覚を持ってこの世界で一個人として生活する事に圧倒的な説得力を持たせ、膨大なコンテンツによってあの手この手でオープンワールドを遊び尽くす事が出来る。クラフトもハクスラも、それ単体ではものすごく楽しい。ゲーム的な楽しみと共に深い没入感をもたらすこの世界は、さながら世紀末生活シミュレーターの様相を呈している。

一方、後者の観点からそれらがRPGとしての本作の完成度に貢献しているかと問われれば、答えはNOである。「RPGの主人公」として世界の運命にダイナミックに関与しようとした所で、バリエーションに富んだゲームプレイは決定的な部分で交わる事が無く、どんなアプローチを掛けても連邦側からのリアクションが薄いまま、主人公の介在によって連邦に決定的な変化が起きる事は無い。旧来の作品では明らかにクエストを中心としてゲームが成り立っていたが、今作のメインクエストは数あるゲームモードの中の一つに地位が後退した事で大きな満足感を持ってゲームを終了する事は出来なくなった。クエストはクラフトやハクスラを楽しむ為、あるいはキャラビルドを完成させる為の小手慣らしという印象が強い。

エンディングの後、それ以上語る事を止めたオープンワールドは、最終的に拠点開発の為の巨大なスカベンジング用倉庫として価値が置き換えられる。

あとは無限のクリエイト能力を持って拠点開発に勤しむ主人公だが、彼(彼女)は連邦の人々が希求するものを完全に忘れてしまっている。思い出したとしても、もう何も彼らの為にしてやれる事は無いのだ。連邦の物語と切り離され、単純にそれ自体が目的化した拠点開発や探索に飽きて来る度に、その事実を繰り返し突き付けられる。そして、「飽きたから止める」という中途半端な終わり方。私は楽しいゲーム部分に夢中になりながら、一方でやり切れないロールプレイに虚無感を感じつつ、今後も本作をプレイし続けるのだろう。

この捉え切れなくなった全体像からして、実は本作は未完成の作品だったのではないかという疑念が湧く。様々なアイデアを詰め込みまくった結果、作品として「完成する」という概念が無くなってしまい、プレイヤーに取ってゲームクリアの概念が無くなってしまった様に、ベセスダにとっても収拾が付かなくなり、これ以上開発し続ける事に限界を感じて発売に踏み切った様に思える。(あるいは、最初から完璧な完成図が存在しなかったのかも知れない)

余談ながら、本作発表の3ヶ月後には『MGSV:TPP』が長い開発期間の末に未完成での発売を余儀無くされるという悪夢が現実のものとなってしまったが、発表から間を置かずに発売された本作も、実はこれと紙一重の状態だった雰囲気を漂わせている*5そもそも、本作ほどの開発期間を要する作品は、制作途中でゲーム産業のトレンドが変化して行く事に対応しつつ、発売時期のトレンドを予想しながら開発しなければならない。プレイ当初は膨大なコンテンツ量に思わず圧倒されてしまうが、システムやデザインが時代を幾分か先取りしていたFallout3に対し、4はギリギリ時代に追いついた位の印象があり、長期間の開発によるデザインの限界は所々に漏れ出ている。*6

もちろんこの未完成と言うのは、本作がつまらないという意味では無い。ゲームとして十二分かそれ以上の楽しさがあるし、並のゲームタイトルが束になっても敵わない魅力を兼ね備えた作品である事は間違いない。ベセスダ作品らしく、セールスへの意識以上に面白そうなアイデアを出来る限り沢山詰め込む宝箱のような作品として仕上げられており、このシリーズに対してよく挙げられる「ウン百時間遊んで飽きるクソゲーというツンデレな評価は本作にも十分に当てはまる。開発期間が長引き、制作費もファンの期待も膨れ上がるという目も眩むリスク(並のデベロッパーなら既に倒産しているだろう)にも関わらず、Fallout4は現代のAAAタイトルの底知れぬ可能性を見せ付けて驚異的な売上げを記録し、再びRPGの巨大なマイルストーンになった。耐久消費財として本作を見た場合、恐ろしく頑丈で、その基礎はDLCやMODによって今日も補完され続けている。

だが同時に、その巨大な記念碑の建設には、開発者だけで無くプレイヤーも共に膨大なコストを捧げなければならない。Fallout4の後退したRPG部分は、ゲームプレイの全体像を断片化させ、終わりが無いゲームプレイに拍車を掛けている。

本作の発売直後、ゲームに夢中になりすぎて仕事も家庭も失ってしまったロシア人の男性がベセスダ相手に訴訟を起こすという笑えない冗談のような事件が起きている。この男性の顛末についてここで是非を唱えるつもりは無いが、本作あるいは現代のAAAタイトルをプレイする為には、ユーザーの膨大な機会費用が発生する事を象徴する事件であった。*7

そして、その献身の果てには楽しいエンドコンテンツと永遠に止揚した連邦が待っている。私も年単位の時間を持ってエンドコンテンツを楽しませてもらっているが、一方で辛い物語と満たされないロールプレイがもたらす苦い余韻が消える事は無さそうだった。

 

そして連邦の時は止まった

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今日も私が駆る主人公は連邦を気ままに旅する。行く手を阻むものは何も無い。彼は爆発アサルトでデスクローを吹き飛ばし、拳銃でレイダーを捻り潰しながら、そのお釣りにヌカランチャーでベヒモスを粉砕する。その身体は驚異的な薬物耐性を持ち、フェラルグールの集団が現れても、ビタミン剤代わりのサイコジェットを使って眼にも止まらぬ速さで脳天を撃ち抜いて、戦闘後にはケロリとしている。唯の酔狂でガラクタを持ち運んでいたかと思えば、それらを一瞬で便利な道具に造り替え、あまつさえ豪華なビルまで建設する。「ゲーム」キャラとしては完璧だ。

だが一人の人間として彼を見た場合、連邦と息子を犠牲にしてまで得られるはずだった「連邦の明日」は、どうあがいても見つける事が出来ない。それは同時に、彼にとっての明日が存在しない事を意味する。

戦い終わって静まり返った連邦では、リコールコードを掛けられた人造人間が如く時が止まる。

彼はエンディングで「覚悟は出来ている」と語ったが、果たしてその覚悟に見合うだけの結末であっただろうか。息子を失ってまで得たこの結末には意味があったのか。教えてくれる人は誰も居ない。時が止まった世界で永遠に遊び続けていても、時折その姿が救いを求めて彷徨う亡霊に見える時がある。どれ程連邦の人々に称賛されようと、大地を駆ける彼の背中にはいつも孤独と苦しみが纏わり付いている。

本当の意味で彼に同情出来るのはプレイヤーである私だけだが、私には最早どうする事も出来なかった。ゲームが続いたとしても、彼の物語はここで終わりなのだから。

*1:エストやコレクタブルなど。これは「何処そこに行ったら何がある」という事実上のネタバレに近く、「プレイする前に解ってしまう事」が作業感に拍車を掛ける

*2:PERKとS.P.E.C.I.A.Lの合計は約280種。恐らく裏技でも使わない限り100時間プレイしても無理

*3:私は銃を使ってばかりで近接武器は使用していない為、ここではシューター部分についてのみ言及する

*4:同時に強力なストーリーを持ったDLCが、本編における主人公の選択に対して一定の結論を出したり、一緒になって考えてくれる。

*5:仮にE3でのプレゼンスがこの状況を逆手に取ったサプライズ発表だったとすれば、それはそれで見事だ

*6:マインクラフトから発想を得たであろう拠点開発や、FPSマルチプレイに於けるアンロックシステムに酷似したカスタマイズ要素、一部MODに丸投げしているバランス調整など

*7:この訴訟は発売直後の興奮が引き起こした極端な事例だとは思うが、昨今では大作をプレイする為に発売日に有休を取る社会人ゲーマーも多い事だろう